忍者ブログ
私、藤乃 夜舞(ふじの やまい)からの、ささやかな恐怖をお楽しみください

- 作品 -

 降霊   延命の湯   夢の終わり 

- リンク -

 小説家になろう   JRANK ブログランキング   人気ブログランキング   FC2 ブログ★ランキング   にほんブログ村 小説ブログ   HONナビ   怖いサイト.com 

当サイトはリンクフリーです。相互リンクのお申込みはメールフォームよりお願いいたします。

| Admin | Write | Comment |
藤乃 夜舞(ふじの やまい)

- 作品 -

降霊
延命の湯
夢の終わり


- メールフォーム -

コメント
トラックバック
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

その場が凍りついたような、奇妙な間ができた。
そして俺達に向けられたイタコの眼差しがみるみる憎悪に満たされていった。
どうやら悪意のある取材であることを悟ってしまったらしい。
カメラは一部始終を見逃すまいと唯一の大きなレンズでイタコと俺の様子を睨み続けている。
「それでは、お願いします」
血の気が引いて真っ青になったイタコを促す俺は、さながら死刑執行人といったところか。
また、少しの間があったのちにイタコは降霊を始めだした。

「う・・・うぅ・・・っう・・・」
幾ばくかの沈黙の後、突然、呻き声のような嗚咽をもらしたイタコが前のめりに突っ伏した。
その場の誰もが目の前で何が起こっているのかを把握できなかった。
演出かとも思ったのだが本当に様子がおかしい。
数分の間、その様子をカメラに収めていたカメラマンが急に叫んだ。
「おいっ!こりゃ本当にやばいぞ!」

医者が駆けつけてイタコを診ている間も、時折、イタコの体は痙攣をおこしていた。
「極度の緊張に耐え切れなかった為に起こった発作」というのが医者の見解だ。
精神安定剤と睡眠薬を投与されて眠るイタコを撮っていても仕方がない。
今日のところは宿に戻って明日以降の撮影にそなえる事になった。

そして静かだった夜が明けると、宿の近所がやけに騒がしくなっていた。
窓から通りに目をやるとパトカーや他局の撮影班の姿が多数見える。
その中には俺達のスタッフも混じっている。

階下に降りると女将と話をしていた2人組みの男が俺の姿を認めて近寄ってきた。
県警捜査一課の刑事だと名乗った男に何事なのかを聞いた。
宿から百メートルも離れていない場所で若い女性の死体が発見されたらしい。
遺体の様子から殺人事件と断定された捜査が始まっており、死体発見現場周辺の昨晩の状況を事情聴取をしているそうだ。

一頻りのアリバイの確認と情報を聞き終えた刑事が席を立ったのを見計らって、1人のスタッフが近寄ってきた。
「今、の刑事さん?俺達も怪しまれてるんですかねぇ?まだ俺のところには来てないんすけどね」
怪しむも何も、死体の発見現場の直ぐ傍に宿をとってるのだから事情聴取するのが当り前だ。
「なんかねぇ、仏さん、酷い状態だったらしいっすよ。腹を割かれて内蔵を持ってかれちゃったんですって」

なんだ。
ちゃんと降霊できてたんじゃないか、イタコの婆さん。

http://syosetu.com/g.php?c=W9968C
PR
やがて本番が始まった。

まだ健在の俺のバァちゃんは無事に降りてきて、そして無事に帰っていったようだ。
つまり、このイタコは降霊など出来やしなかったのだ。
口の端にいやらしい笑みを浮かべるスタッフも見えだした。
そして、少しの滞りもなくロケは順調に進んでいく。

俺は頭の中の台本通りに「もう一人の口寄せ」を依頼し、それは快諾された。
少し休憩を挟もうかといったスタッフの言葉に、イタコは「日に三十人を降ろした事がある」と豪語した。
一人や二人の口寄せは屁でもないとアピールしているようだ。
それでも三十分の休憩を挟むこととなりロケ班長が俺に囁く。
「外国の事件の方が面白いかもな。どうせ日本語しか喋れないだろ?あの婆さん」

三十分の休憩の間に件のリストから二十三分の一の確立で俺に選ばれた名誉ある犯罪者は『Jack The Ripper』だった。
『切り裂きジャック』のあだ名を持つ犯人がしでかした事件は洋の内外を問わず広く知れ渡っている。

十九世紀末のロンドンを震撼させた連続殺人鬼は五人の娼婦をメスのような鋭利な刃物で次々と殺害した。
そして割いた腹から取り出した子宮や膀胱などの臓器を戦利品の如く持ち帰っている。
ロンドン市警に投書された彼(彼女?)からの手紙には被害者の腎臓の一部が同封されていた。
最後に殺害された被害者にいたっては目鼻の位置もわからないぐらいにまでバラバラに解体されていた。
ロンドン市警のみならずスコットランドヤードも血眼になって犯人を追い、四人の容疑者が浮かび挙がったが結局は迷宮入りとなったという、
あの事件だ。

有名な事件なのだからイタコも知っているかもしれない。
オンエア後のイタコの生活を少し不憫に思い、贖罪の意味も込めてイタコにかけた俺なりの情けだった

http://syosetu.com/g.php?c=W9968C
≪ Back   Next ≫

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7]

Copyright c - チョットしたホラー小説など -。。All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog / Material By 御伽草子 / Template by カキゴオリ☆
忍者ブログ [PR]