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私、藤乃 夜舞(ふじの やまい)からの、ささやかな恐怖をお楽しみください

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藤乃 夜舞(ふじの やまい)

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帰宅後、いつものように風呂・食事・メールチェック・お気に入りのサイトの巡回と、
加えて久しぶりの夜の営みを終えて心地よい疲れの中で眠りについた。

不意に私の目の前に若い女性の苦しむ顔が現れた。
その顔には数箇所の殴られたのか何処かで打ったのかしたような跡が有り、傷口からは出血もしている。
目は大きく見開かれ、今にも目玉が転げ落ちそうな程になっている。

と、彼女のうめき声が消えた。
のたうっていた舌も動きを止め、ダラリと重力に引かれるままとなっている。
痙攣を起しているのか、ピクリピクリと顔全体が小刻みに揺れる。

「うわぁーっ!!」
私は大声で叫んでいた。
「どうしたの!何!?なんなの!?」
隣で寝ていた妻も跳ね起きる。

夢だった。
とても嫌な夢だった。

妻に夢の話をすると、浮気相手を殺して帰ってきたなんて事はないでしょうね?と意地悪く笑われた。
汗でビッショリと濡れた寝間着を着替えて再び床についた。

時計は午前三時を指していた。
しかし、あの女性は誰なのだろうか?私の周りにいる女性でないのは確かなのだが・・・。

その日から三日後の朝刊の記事を見た時、私は自分の目を疑った。
そこには、あの夢に出てきた女性の顔写真が殺人事件の被害者として載っていたからだ。

慌ててテレビをつけてみると、どのチャンネルでも同じ事件を取り上げている。
死因は頚部を締め付けられての窒息死で推定犯行時刻は昨夜の二十三時から今朝の五時だそうだ。

これは一体どうゆうことなんだ?
私は「犯人が被害者を殺めている視点」で「未来の殺人現場」を目撃したという事なのか?
いやしかし、そんな馬鹿なことがあるわけない。

だが私が夢を見た時間が推定犯行時刻とも凡そ一致している。
しかも、私の見た被害者とメディアで騒がれている女性は同じ人にしか見えないのだ。

とてもじゃないが仕事をする気にはなれず、その日は体調不良と云って会社を休んだ。
警察に連絡をしようかとも思ったのだが、通報しないことにした。
夢には犯人を特定できるものは何も出てこなかったからだ。
それよりも、こんな馬鹿げた話など信じてはもらえまいと思ったのが本当の理由だった。

それから数回に渡って、あの公園で違和感を覚える日があった。
違和感を感じた日の夜は、決まって誰かの視線で誰かを殺す夢を見た。
そして、これも決まって二日か三日後に悪夢の主人公達は遺体となって発見されていった。

時には何処の国の人なのかの見当もつかない外国人を殺すこともあったが、現在も生きているのかどうかは判らない。
しかし、知りえた事件の被害者はみんな死体となっていたことを考えると、やはり殺されてしまったのだろう。


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